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PRIVATE PREVIEW · STORY 43

注文を助ける再現物が、見ること自体の目的になる。

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展示台の食品サンプルを近くで見る二人の水彩画
Illustration: YOMITABE

店の外に、料理がある。オムライス。天ぷら。ラーメン。でも、食べられない。食品サンプルだ。

ガラスの向こうで、席に着く前の人を待っている。これにする? こっちもいい。目はサンプルで止まり、気持ちは店の中へ進む。食品サンプルは、注文までの途中にいる。

その途中にいたものが、店を離れる。向かう先は、東京・府中。ミッテン府中、7階。

2026年10月3日から18日まで開かれる『食べちゃダメだぞ!食品サンプルアート展』には、イワサキ・ビーアイの社内製作コンクール作品を中心に、約60点が並ぶ。

会社の中へ、少し戻る。コンクールが始まったのは1968年。普段の職人は、飲食店の注文に忠実につくる。この皿を、この大きさで。このソースを、この流れ方で。本物へ近づく仕事だ。

でもコンクールでは、『つくりたいものをつくる』ことが許されるという。注文された料理から離れる。本物へ近づく技術が、本物にはないものをつくり始める。

そして作品は、会社から展示室へ移る。店先なら、見たあとに注文する。展示室では、注文しない。近づく。横から見る。どう作ったのか考える。

視線が、その先の料理へ進まない。サンプルのところで止まる。料理の代わりだったものが、見に行く目的になった。

店の外から、会社の中へ。会社の中から、展示室へ。移動するたび、食品サンプルの役目が変わる。

最後まで食べられない。なのに今度は、見るだけで帰ってもいい。

✑ きのゆえ