← PREVIEW INDEX
PRIVATE PREVIEW · STORY 46

冷やご飯とお茶には、かけるだけでなく煮直す食べ方がある。

下へ読み進める
冷やご飯をほうじ茶の土鍋へ戻し茶粥にする水彩画
Illustration: YOMITABE

朝。冷蔵庫に、昨夜のご飯がある。電子レンジへ。数分。はい、温かい。

時間を戻す。保温する炊飯器も、電子レンジもない朝。夜に炊いたご飯が、冷えて残っている。どうやって温かく食べる?

奈良では、ほうじ茶を煮出した。そこへ冷やご飯を入れる。鍋で、もう一度炊く。『おかいさん』と呼ばれる茶粥だ。

お茶漬け? 似ている。でも、お茶をかけて終わりではない。ご飯を、お茶の中へ戻す。昨夜のご飯と、今朝のお茶が、鍋の中でしばらく一緒にいる。

大和では夜にご飯を炊く家庭が多く、残ったご飯を翌朝温かく食べる方法として広まったと考えられている。

さつまいも。かぼちゃ。里芋。栗。かき餅。家にあるものを加え、腹持ちをよくすることもあった。

昨日のご飯を、昨日と同じ姿へ戻さない。お茶の色をまとわせて、朝の食べ物へつくり直す。

時間を進める。炊飯器が保温する。電子レンジが温める。農林水産省の記録では、今では毎朝茶粥を炊く家庭はほとんどなくなったという。困りごとが減ると、料理も減る。

そして、今朝へ戻る。冷蔵庫に、昨夜のご飯がある。電子レンジなら数分。でも、ほうじ茶もある。

早く温める方法を知ったあとでも、ゆっくり別のものにする方法は残っている。

お茶をかける、のではなく。昨日を、今日の鍋へ戻す。

✑ よなより