← STORIES
STORY 18

全国では正月の象徴に見える黒豆も、丹波篠山では田植え、秋の黒枝豆、祝い事など一年の複数の時間にいる。

黒豆を見ると、正月だと思う。

十二月。

スーパーに「丹波黒」。おせち売場にも黒豆。

うん。冬の食べもの。

・・・・・・と思っていた。

十月。

丹波篠山では黒枝豆を食べる。

同じ黒大豆。でも、まだ若い。早い時期は莢も青く、熟すにつれて色が変わっていく。

最初から、真っ黒ではないんだ。

黒豆なのに。

さらに巻き戻す。

六月。

田植えのころ、かつて丹波篠山の農家では、自分たちで食べる黒大豆を田んぼのあぜでも育てていたという。

その豆を炊き込んだ黒豆ごはん。

ごはんは、うっすら紫色になる。

「さびらき」と呼ばれる田の神の行事では、それを丸めて朴の葉で包み、神棚や田んぼへ供えた。

六月。

十月。

十二月。

同じ豆なのに、三回も季節が変わった。

葉に包んだ黒豆ごはん、黒枝豆、煮豆を並べたラフな水彩イラスト
六月、十月、十二月。同じ豆が、季節ごとに別の顔を見せる。

全国へ出てくると「おせちの黒豆」という顔がいちばん分かりやすい。でも産地へ戻ると、田植えにもいる。秋には枝豆になる。祝いの日や法事にもいる。

黒豆、思っていたより忙しい。

十二月だけの人じゃなかった。

次に黒枝豆を見かけたら、たぶんちょっと立ち止まる。

まだ熟しきる前の黒豆。

・・・・・・やっぱり名前が面白い。