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STORY 20

五平餅は一つの固定した形ではなく、中部の山あいを少し移動するだけで形、串、たれが変わる。土地を移動しながら食べものを見る。

木曽の山道を走るなら、探してみたい看板がある。

「五平餅」

あった。

こういう看板、見つけると止まりたくなる。

道の駅。峠の店。古い町並みの軒先。

見つけたら、「一本ください」。

奥で焼き始める。

味噌の匂い。

・・・・・・まだかな。

五平餅は、ごはんをつぶして串につけ、たれを塗って焼く。木曽や伊那、岐阜の東濃、愛知の三河など、中部の山あいに広く残る食べものだ。

でも、次の町へ行くと形が違う。

丸い。

平たい。

団子が二つ、三つ。

わらじみたいに大きいものまである。

同じ五平餅だよね!?

わらじ形と丸い団子形の五平餅を三本並べた水彩イラスト
同じ五平餅でも、形が少しずつ違う。Illustration: YOMITABE

串も違う。たれも違う。

味噌。醤油。くるみ。ごま。山椒。柚子。

木曽から少し移動しただけで、五平餅が着替えていく。

起源にはいくつか説があり、山仕事との関わりを伝える地域もある。米が貴重だった時代には、祭りや祝い、田植えのあと、新米の時期などのごちそうでもあったという。

いまは一年中食べられる。

だからこそ、移動しながら食べ比べられる。

木曽で一本。

次の町で、また一本。

・・・・・・いや、さすがに二本目はあとで。

焼けた。

紙に包んでもらう。

串の端を持って、ひと口。

味噌が少し焦げている。

車に戻る前に、半分くらい食べてしまいそうだ。