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STORY 25

どんぐりから豆腐状の食べものを作る高知の『かしきり』。『かしの実が笑う』という言葉も含め、山の実が食べものになるまでの時間を見る。

どんぐりを拾う。

子どものころなら、ポケットへ。

今なら、たぶん写真を撮る。

食べる、は出てこない。

ましてや。

豆腐にする!?

高知県安芸市に「かしきり」という食べものがある。

材料は、かしの実。

あらかしの実。つまり、どんぐり。

それと、水。

大豆も、にがりも使わない。

なのに、できあがると四角く切って食べる、豆腐のような姿になる。

・・・・・・どうやって?

どんぐり、砕いた実、かしきりへと変わる様子のラフな水彩イラスト
拾った実が、砕かれ、さらされ、四角い食べものになる。

ここからが長い。

秋の終わりごろ、山でかしの実を拾う。

天日に干す。

しっかり乾くと、殻に割れ目が入る。

この状態を地元では、

「かしの実が笑う」

というらしい。

いい言葉だなあ。

実が笑ったら、中身を取り出す。

砕く。

水にさらす。

また水を替える。

また替える。

上澄みが澄むまで、何度も。

今の作り方でも、この渋抜きに2日ほどかかるという。

まだ食べられない。

粉にした実を水と一緒に火へかける。

焦げないように混ぜ続ける。

でんぷんが、どろり。

型へ流す。

冷ます。

やっと固まる。

どんぐりを拾ったところから考えると、ずいぶん遠くまで来た。

昔、高知の山間部では、かしきりは救荒食としても食べられていたという。

いまは食べる機会が少なくなり、農林水産省の資料では安芸市に残る貴重な郷土料理として紹介されている。

食べるときは、高知の「ぬた」をかける。

葉にんにく、ごま、味噌、米酢などを合わせたもの。

山の実が、四角く固まって、ぬたをまとって皿にいる。

最初にどんぐりを見た人が、ここまでたどり着くまでに、どれくらい時間がかかったんだろう。

・・・・・・いや。

今日はそこまで昔へ行かなくてもいいか。

気になるのは、ひとつ前。

秋の山。

地面に落ちた、かしの実。

拾って、干して。

ある日、殻に小さな割れ目が入る。

「あ、笑った。」

たぶん次にどんぐりを見つけたら、そこを確かめる。

笑ってるかな。