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STORY 29

祖谷のじゃがいも、豆腐、こんにゃくなどを串に刺し、囲炉裏で回しながら焼く料理。名前の面白さから入り、土地の材料と焼く動作まで追う。

徳島の山へ入っていく旅を、思い描く。

道が細くなる。

谷が深くなる。

祖谷。

この土地の郷土料理資料で見つけた名前が、

でこまわし。

・・・・・・何を回すの?

出てきたのは、串。

じゃがいも。

豆腐。

こんにゃく。

そば団子。

串に刺して、味噌だれを塗って、火のそばでくるくる回しながら焼く。

あ、本当に回してる。

じゃがいも、豆腐、こんにゃくに味噌を塗った三本のでこまわしの、水彩イラスト
じゃがいも、豆腐、こんにゃく。火のそばで、また回す。Illustration: YOMITABE

「でこ」は木偶、人形のこと。

串に刺さった具材を回しながら焼く姿が、人形がくるくる回っているように見えることから、この名前になったと伝わる。

名前を知ってから見ると、急にそう見えてくる。

じゃがいもが上。

豆腐が真ん中。

こんにゃくが下。

・・・・・・ちょっと人っぽい?

いや、そこまでではないか。

祖谷は山深い土地だ。

そこで採れるじゃがいもや、硬めの豆腐、こんにゃくなど、身近なものを串に刺して焼く。

味噌が火に近づく。

じりじり。

少し焦げる。

匂いが出る。

また回す。

反対側も焼く。

料理名だけ聞いたときは、もっと不思議なものを想像していた。

でも材料を見ると、じゃがいもと豆腐とこんにゃく。

かなり普通。

普通なのに、山を越えてここまで来ると、名前も食べ方も知らないものになる。

いつか現地で、一本もらいたい。

熱い。

味噌はどれくらい甘いんだろう。

次の具まで、串を少しずらす。

・・・・・・でこを食べる日が、楽しみだ。