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STORY 33

熱いコーヒーが、カップから氷のグラスまで十数センチ移動する。その短い移動を客へ渡す、コンパル独自のアイスコーヒーの完成を見る。

アイスコーヒーを頼む。

熱いコーヒーが来る。

……違う!?

これで合っている。

名古屋の喫茶店・コンパルのアイスコーヒーは、デミタスカップに入った熱いコーヒーと、氷を入れたグラス、クリームが一緒に出てくる。

冷たくするところだけ、まだ終わっていない。

カップを持つ。

少し傾ける。

熱いコーヒーが、氷の入ったグラスへ移る。

熱いコーヒーをカップから氷のグラスへ注ぐ、水彩イラスト
カップから、氷のグラスへ。最後のひと手間を、飲む人が。Illustration: YOMITABE

カラン。

ここで、アイスコーヒーになる。

公式の説明では、ホットと同じ豆を、同じ量だけ使う。ただし湯量は少なく、濃く抽出する。氷で一気に冷やし、氷が溶けたとき、ホットと同じ濃度になるよう考えられているという。

冷たいコーヒーを運んできたのではない。

熱さ。濃さ。氷。

三つを別々にテーブルへ置いて、最後の移動だけを飲む人に残している。

1947年の創業時から続くオリジナルブレンド。変わらない味の最後に、毎回、小さな手作業が入る。

店から手元へ。

カップからグラスへ。

移動は、ほんの十数センチ。

その十数センチのあいだに、名前がアイスコーヒーへ変わる。