アイスコーヒーを頼む。
熱いコーヒーが来る。
……違う!?
これで合っている。
名古屋の喫茶店・コンパルのアイスコーヒーは、デミタスカップに入った熱いコーヒーと、氷を入れたグラス、クリームが一緒に出てくる。
冷たくするところだけ、まだ終わっていない。
カップを持つ。
少し傾ける。
熱いコーヒーが、氷の入ったグラスへ移る。

カラン。
ここで、アイスコーヒーになる。
公式の説明では、ホットと同じ豆を、同じ量だけ使う。ただし湯量は少なく、濃く抽出する。氷で一気に冷やし、氷が溶けたとき、ホットと同じ濃度になるよう考えられているという。
冷たいコーヒーを運んできたのではない。
熱さ。濃さ。氷。
三つを別々にテーブルへ置いて、最後の移動だけを飲む人に残している。
1947年の創業時から続くオリジナルブレンド。変わらない味の最後に、毎回、小さな手作業が入る。
店から手元へ。
カップからグラスへ。
移動は、ほんの十数センチ。
その十数センチのあいだに、名前がアイスコーヒーへ変わる。