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STORY 09

デパ地下は商品を集めるだけでなく、異なる店の間を歩くことで、形のない季節をひとつの景色として読める場所になっている。

たとえば、9月のデパ地下を歩くなら。

外は、まだ暑い。

木も青い。

秋?

まだじゃない?

百貨店に入る。

エスカレーターで地下へ。

一階ぶん降りる。

栗。

ぶどう。

いちじく。

洋梨。

・・・・・・秋、いた。

栗、ぶどう、モンブランを紙のトレーに集めた、ラフな水彩イラスト
違う店の秋が、ひとつの通路に集まっている。

地上より先に、地下にいた。

少し歩く。

栗はモンブラン。ぶどうはタルト。りんごはお菓子。

その先へ行くと、きのこやさつまいもが惣菜になっている。

店は全部違う。

なのに、通路を歩いていると、全部まとめて「秋」に見えてくる。

面白い。

洋菓子店だけならケーキの秋。和菓子店なら栗と芋の秋。惣菜店なら今日の夕食の秋。

デパ地下では、その間を自分で歩ける。

甘い。

しょっぱい。

贈りもの。

晩ごはん。

また甘い。

気づけば、ひと回り。

何も買ってない。

・・・・・・まあ、いいか。

今日は季節を見に来たことにする。

エスカレーターで地上へ戻る。

外はやっぱり暑い。木もまだ青い。

でも、さっきより秋が近く感じる。

あ。

モンブランだけ、買えばよかった。