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STORY 15

食品の日付は食べものそのものの時計ではない。数字の細かさが、食べる側の安心や判断まで動かしている。

冷蔵庫に、賞味期限が9月20日のヨーグルトがあるとする。

9月20日。

今日は16日だから、あと4日。こういうとき、私はなぜか少し安心する。まだ4日ある。

ところで、この「4日」は何だろう。

ふたに賞味期限9月20日と書かれたヨーグルトとスプーンの水彩イラスト
気になるのは、中身より先に、ふたの日付。Illustration: YOMITABE

時計なら、9月20日の23時59分59秒を過ぎた瞬間に何かが変わる。でもヨーグルトは時計を見ていない。19日から20日へ、20日から21日へ。冷蔵庫の中では、たぶん昨日と同じように時間が流れている。

賞味期限は、おいしく食べることができる期限。消費期限は、過ぎたら食べない方がよい期限だ。どちらも、表示された保存方法を守った未開封の状態が前提になる。

この違いは知っていた。知っていたはずなのに、「9月20日」と印刷されていると、20日と21日の間に太い線が引いてあるように見える。

そういえばスーパーでも日付を見る。牛乳を取って、日付を見る。隣の牛乳も見る。奥にある一本も見る。同じ牛乳を買うだけなのに、ずいぶん日付を見ている。

少しでも先の日付を選ぶ。長く置いておける方がいい。理屈は分かる。でも、明日の朝に開ける牛乳でもやる。これは何だろう。

得をしたいのか。安心したいのか。未来の自分に、牛乳を残してあげたいのか。

話が牛乳になってしまった。

ヨーグルトに戻る。

期限は、食品の特性や試験・検査の結果などを踏まえ、表示に責任を持つ事業者が設定している。ただ適当に印刷された日ではない。一方で、賞味期限を一日過ぎた瞬間に、必ず食べられなくなるという意味でもない。開けたら、表示の日付とは別に早めに食べる必要がある。

ここまで考えて、別のことが気になった。賞味期限には、「年月日」ではなく「年月」だけの表示もある。消費者庁の説明では、製造日から賞味期限までが3か月を超える食品に認められている。

2026年9月。

それだけ。20日が消えた。19日も21日もない。急におおらかだ。

同じ「期限」なのに、日まで書かれると一日が大きく見えて、月までになると一か月がひとまとまりになる。数字の細かさで、こちらの気持ちまで変わる。

冷蔵庫を開ける。ヨーグルトはまだある。

9月20日。

今日は16日。