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STORY 19

古く酸っぱくなったたくあんへ、わざわざ手間をかけて煮直す料理が『贅沢』と呼ばれる。名前から作りかけた解釈を途中で疑う。

贅沢煮。

いい名前。

肉かな。魚かな。

たくあんだった。

え、たくあん!?

しかも新しいやつじゃない。前年に漬けて、夏を越して、酸っぱくなってきた古たくあん。

それを切る。

水にさらす。

煮る。

水を替える。

また煮る。

塩を抜いて、今度はだしや醤油、唐辛子で味をつける。

鍋で煮た古たくあんと切る前のたくあんを描いた水彩イラスト
一度できあがったたくあんを、もう一度煮る。Illustration: YOMITABE

……待って。

たくあん、もう完成してたよね?

保存するために塩を入れて、その塩を抜いて、もう一度煮る。

遠回りすぎる。

福井では「古たくあんの煮たの」などと呼ばれる料理で、その呼び名のひとつが「贅沢煮」。高い食材だから贅沢なのではなく、古いたくあんへ、わざわざもう一度手間をかける。そのあたりから来た名前だという説明がある。

なるほど。

時間をかけることが、本当の贅沢――

……って、まとめたくなる。

でも、ちょっと待って。

昔の人が「今日は贅沢しよう!」と言って古たくあんを煮ていたかは分からない。捨てるのが惜しかっただけかもしれないし、最後まで食べるのが普通だったのかもしれない。

危ない。

たくあん一本で、人生論を始めるところだった。

鍋の中には、だしを吸った古たくあん。

まず、食べてみたい。

話はそれからだ。