贅沢煮。
いい名前。
肉かな。魚かな。
たくあんだった。
え、たくあん!?
しかも新しいやつじゃない。前年に漬けて、夏を越して、酸っぱくなってきた古たくあん。
それを切る。
水にさらす。
煮る。
水を替える。
また煮る。
塩を抜いて、今度はだしや醤油、唐辛子で味をつける。

……待って。
たくあん、もう完成してたよね?
保存するために塩を入れて、その塩を抜いて、もう一度煮る。
遠回りすぎる。
福井では「古たくあんの煮たの」などと呼ばれる料理で、その呼び名のひとつが「贅沢煮」。高い食材だから贅沢なのではなく、古いたくあんへ、わざわざもう一度手間をかける。そのあたりから来た名前だという説明がある。
なるほど。
時間をかけることが、本当の贅沢――
……って、まとめたくなる。
でも、ちょっと待って。
昔の人が「今日は贅沢しよう!」と言って古たくあんを煮ていたかは分からない。捨てるのが惜しかっただけかもしれないし、最後まで食べるのが普通だったのかもしれない。
危ない。
たくあん一本で、人生論を始めるところだった。
鍋の中には、だしを吸った古たくあん。
まず、食べてみたい。
話はそれからだ。