柿には、木から採ってそのまま食べられるものと、そうはいかないものがあります。
渋柿は、名前の通り渋い。果肉に含まれるタンニンによって強い渋みを感じるため、そのままでは食べにくいのですが、昔からその柿をおいしく食べる方法がつくられてきました。
皮をむき、ひもにつけ、吊るして風に当てる。干し柿です。

山梨県の枯露柿、福島県のあんぽ柿、長野県の市田柿。農林水産省の郷土料理や産地の紹介にも、土地ごとに育まれてきた干し柿の姿が見えます。
同じ柿を干していても、乾燥のさせ方、水分の残し方、品種、土地によって、やわらかさや見た目は変わります。そして干し柿には、もう一つ気になるところがあります。加工の途中が隠れていないことです。
工場の中で完成する食品なら、私たちは完成品だけを見ることが多いものです。でも干し柿は、軒先や干し場に吊るされた姿そのものが、その土地の季節の景色になります。
オレンジ色の柿が何列も並び、生の柿から干し柿へ変わっていく途中が、そのまま外から見えています。
時間がたつにつれて水分が抜け、渋みが感じにくくなり、甘さが際立っていきます。実は小さくなり、表面にしわが寄り、ものによっては白い粉をまといます。
砂糖を加えて甘くしたわけではないのに、渋かった果実が、冬のお茶の横に置きたくなる甘い保存食へ変わっていく。
干し柿は、秋の果物を冬まで残す方法です。そして、その変化を待つ時間まで風景にしてしまう食べものでもあります。